昨年クラウドファンディングが行われ、私も支援していたVRミステリーアドベンチャー『東京クロノス』が3月20日にリリースされました。
リリース日に早速インストール、1日1~2時間ペースでプレイし、やっと(バッドエンディングを含め恐らく)全てのストーリーの体験を完了しました。概ね10時間くらいのプレイ時間ですね。
ある時点から一度体験したシーンはSKIPできるようになるのですが、そのSKIP機能を使わなければ、以前の「制作共犯者ミーティング」で岸上プロデューサーが言っていた通り総プレイ時間は14~15時間になる、VRコンテンツとしては(少なくとも日本では初の)長編コンテンツでした。
第二章以降のネタバレは禁止になっているので、ストーリー上の詳しい話は書けませんが、主人公を含めた幾人かのキャラクターの感情にある、「動きたくても一歩前に出ない」という感情が、今の自分自身にも共通するところがあり、心に刺さるものでした。
私自身はPCやスマホゲームでの、こういったノベル系ゲームをあまり経験していないので、もしかすると「そんなのよくあるストーリーだよ」と言われるのかもしれませんが、VRによるキャラクター目線でのストーリー進行は、小説や映画、PC、スマホのノベルゲームなどとは全く異なる「自分ごと」のように体験できます。
(この手のミステリー物の定番なので大丈夫かと思いますが、若干ネタバレで)ストーリー中、主人公が一番の容疑者になるシーンで、他のキャラクター全員から疑惑の目を向けられるというシーンなどは、VRだからこその感覚を得られます。
プレイしている最中でいろいろ感じた点をいくつか挙げるならば…
私はOculusGO(3DoF:3軸の性能しかない)しか持っていないのですが、この『東京クロノス』では、3DoFでも十分な没入感を得られるようにあらかじめ作られています。恐らく6DoFのHMDで体験するともっと没入感が高まるのでしょうけれど、その必要が無いように設計されています。なのでVR酔いはまず発生しないのではないでしょうか。
音響にもかなり力が入っています。登場人物の位置、自分の向きなどから正確に音が流れてきます。また場面によって音響効果も調整されているようで、スクランブル交差点のような開放的な場所での会話と、建築中のビル内の閉鎖空間、ホテルの空間などではキャラクター達の台詞の響き方がそれぞれ違っています(これは、OculusGOの標準スピーカーより、外付けのヘッドフォンで聴くとより解ると思います)。また、発言中、セリフの両脇にデザイン化されたインジケータがあり、見た目でも発言者の方向がわかるようになっています。
キャラクターの動きはかなり削られています。初めてプレイするときには、PCやスマホゲームのアニメーションに慣れている人には物足りなさを感じるかもしれません。これは現状のハードウェア性能によるためなのですが、ポイントポイントはしっかり動いているので、プレイを進めていくうちに、全く違和感がなくなってきます。
ストーリー中、回想シーンが結構多く挿入されます。これは客観的な視点なので、あまり没入感がありません。没入しっぱなしを防ぐための休息という意味合いもあると思うのでしょう。一方で、ラスト近くは思った以上に回想シーンが多く、ちょっと中だるみしてしまった感じがありました。でもこれ以上削るのは難しいのかな…。
この回想シーンで、ついツッコミを入れたくなってしまったのは、屋上遊園地のシーン。登場人物が小学生時代に、渋谷の屋上遊園地に集まっている風景なのですが、観覧車があるため思わず「こいつら今何歳?」とw(東横ビルの屋上遊園地に観覧車があったのは40年ぐらい前)。とはいえ、遊園地というシーンをシルエットだけで表現するには、アイコンとして観覧車を描かないと難しいですね…。まぁ、クロノス世界は時空も記憶も歪めるらしいので、そういうことにしましょう。
(こんなところをツッコむのは遊園地マニアぐらいでしょうしねw)。
全体としてはミステリーなので、若干重めのストーリーですが、時々クスッとするシーンもあり、物語としても非常に良くできています。
これだけのレベルのコンテンツが登場したことで、今後登場するVRノベル系コンテンツは、演出もストーリーも、これを超えるような高いレベルを要求されることになりそうですね。
CF支援したので、クレジットの「制作共犯者」に自分の名前があるのを確認。
支援という形だけですが、こういった「時代を変えるかもしれない」コンテンツに関われたことをとても光栄に思います。
【おまけ】
東京クロノス攻略法(OculusGO版基準)
①可能な限り外付けヘッドフォンで体験しましょう
没入感には音も重要。最低でもステレオイヤホンで体験しましょう。
②レンズの曇り対策を
HMDを長時間着用します。曇ったらすぐに拭けるように眼鏡拭き布などを手元に用意しておきましょう。
また、風呂上りなど汗をかいた直後の体験は避けましょう。
③時間に余裕のある時に体験しましょう
後ろに予定がある時など、良いところで中断しなければならなくなったり、のめり込んで時間を忘れて遅刻する恐れがあります。
④章単位など、区切りの良いところで休憩を
物語の情報量が非常に多いです。早く先に進めたいという気持ちはわかりますが、一気に進めると処理しきれなくなり、重要な伏線を忘れてしまったりします。章単位で休憩を入れたり続きを翌日に回したりして、その間にこれまでの物語を頭の中で反芻しましょう。
⑤バッテリー対策を忘れずに
休息のたびに本体充電しましょう。また、コントローラーの予備バッテリーも手元に用意しておきましょう。本体は給電しながらのプレイも良いですが、ケーブルが邪魔になるかも…
⑥一定期間ネタバレ禁止
公式が許可するまでネタバレは控えましょう。PlayStationVR用はまだ発売されていません(2019年7月予定)。恐らくその後に公式からネタバレ解禁の指示がでるはず…。
どうしてもという場合は、プレイ完了者だけで集まる場を作りましょう。もしくは、ネタバレ専用の場やイベントを今後公式が用意することに期待しましょう