ねおあみ日記

アミューズメント施設や旅行に行った時の日記を掲載しています。今現在「日本で一番、自腹で沢山の種類の施設型VRアトラクションを体験している」と自負(プロフィール参照)。

ICC:【知覚の大霊廟をめざして】20年以上過去の未来的インタラクティブアートの再修復展示

 NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)にて、2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)開催の【知覚の大霊廟をめざして——三上晴子のインタラクティヴ・インスタレーション】を観覧。
 ICCが1997年に開館する前の準備段階から関わりが深かったアーティスト・三上晴子氏が病で2015年に没してから10年を機に開催された展示会です。

 展示されているのは絵画や彫刻などと異なり、当時「インタラクティヴ・インスタレーション」と称していたもので、今で言えばチームラボやNAKEDなどのデジタルアート、イマーシブアートといったものの先駆けとなった作品です。これらの作品は残された機材をそのまま設置しても、制御機器の劣化などの影響で稼働できないものばかりです。今回の展示では、作品の修復についても解説などがあり、デジタル技術系アート作品の保存の難しさも紹介しています。

 

《gravicells—重力と抵抗》

 2004年作品。床面のセンサーが圧力を感知して、床面上に重力のような波形を描き出すもの。その場のセンサーだけでなく、会場のGPSデータも波形に影響を与えているとのこと(これはよくわからず)。

 

《Eye-Tracking Informatics》

 原型は1996年の《モレキュラー インフォマティクス—視線のモルフォロジー》。それを2011年に再制作したもの。視点認識デバイスを装着し、スクリーンを見つめる方向によって、空間を浮遊していきます。スクリーンには以前に他の方が浮遊した軌跡があり、それを追いかけたり、離れたり、進む方向は自由。最後に自分が飛行した軌跡が作品として表示されます。

www.youtube.com

 アートとしては別に、この作品を用いて、体験者の軌跡パターンを分析した研究者の論文も展示されています。かなり難解な分析ですが、「軌跡は主に4つのパターンに分類される」とのこと。更に細かい分析の結果は論文が公開されてますので、そちらを参照ください。

https://www.ntticc.or.jp/uploads/assets/007/7446e.7818/ETI-analysis.pdf

 

《存在,皮膜,分断された身体》(サウンドインスタレーション版の再現展示)

 ICCには「無響室」という一切の音が反響しない部屋があります。この部屋を作るきっかけとなったのがICC開館時から2000年まで展示されていた《存在,皮膜,分断された身体》。20年以上昔のシステムであるため、当時の機器は現存するものの故障していたり、パソコンが古すぎるなどの理由でそのままでは稼働できなかったそうです。

 無響室内の椅子に座ると完全な暗闇になり、7方向にあるスピーカーから心音が聞こえてきます。本来は体験者自身の心音を取り込んで再生する「インタラクティヴ・インスタレーション版」ですが、心音を取り込むセンサーなどの修復が出来ず、今回は三上氏の心音を用いた「サウンドインスタレーション版」とのこと(無響室内は電子機器などを持ち込めないので内部の写真はありません。後に掲載のWEBサイトを確認ください)。

展示室に置かれた当時のシステムと、無響室内のモニター映像

 インタラクティブ版ではなくても、開始前にかすかに聞こえる自分の心音と、三上氏の心音が不思議な感覚を生み出している作品でした。

 

公式サイト《存在,皮膜,分断された身体》《欲望のコード》紹介ページより

 

《欲望のコード》

 会場内で一番広いスペースを用いた大型インタラクティヴ・インスタレーション。ただしこちらは撮影禁止。
 部屋には3つの作品があります。
 「蠢く壁面」は壁に多数設置された光る棒が、人のいる方向を向くように動き、移動するとそれに追随していきます。
 「多視点を持った触覚的サーチアーム」は、天井から何台も吊り下げられた、カメラとプロジェクターが搭載されたアームが鑑賞者を追尾し撮影、そして床面に投影。移動しても追いかけてきます。アームはそれぞれ独立して動いているようにも、連動して動いているようにも見えます。
 「巡視する複眼スクリーン」には、多数の映像が映し出され、サーチアームのカメラの映像もあれば、ネット上で公開されている監視カメラの映像もあります。

 いずれの作品にも共通するのは、展示エリアに入った鑑賞者がこれらの作品に取り込まれ「監視」されているような不思議な感覚になることです。

 

 この《欲望のコード》や《Eye-Tracking Informatics》などの展示に合わせた修復作業の模様をシアターで鑑賞できます。アートの作者が亡くなられているため、その修復にはかなりの困難があったようです。

 いまでも様々なデジタルアートが世に出ていますが、それらも数十年と経過した未来に、そのアートが問題なく鑑賞できなくなっている恐れがあります。いかにして、そのような「形として残らない」アートを残していくのか。今回の展示は、そのことも伝えているように感じました。

 

www.ntticc.or.jp