日本での演劇パフォーマンス系イマーシブシアターの老舗ダンスカンパニーDAZZLEが、2024年10月より東京駅近郊で公演しているイマーシブエクスペリエンス『AnemoiaTokyo(アネモイアトーキョー)』に参加しました。
東京駅から神田方面に向かう線路の高架下に会場があります。護符のようなデザインのロゴはよく見ると縦書きは英語で、横書きはカタカナで、タイトルが書かれています。
大きな手荷物(リュックなど)はコインロッカー(有料300円)へ。公演開始の30分前から入場。
館内は、今回の公演に合わせてコラボしたアーティストによる作品が多数展示されており、上演の5分前まではエキシビションタイムとしてアート作品を自由に鑑賞できます。このエキシビションタイム中のみ写真撮影と15秒以内の動画撮影もOK。
DAZZLEの過去公演を始めとして、イマーシブシアターのほとんどは、「会場内の写真撮影」「ストーリーなどのネタバレ」の厳格な禁止を謳うところが多いようなですが、本作については公演中の写真・動画撮影は禁止されているものの、エキシビションタイム中に撮影した写真をSNSに公開したり、ストーリーの内容を記載すること自体は禁止されていません。
さすがに物語の結末に関わるようなネタバレは皆さん自主的に控えているようですので、ここでもそれに準じた記載にとどめておきます。と言っても、多少のネタバレの内容がありますので、ここから先の記載内容につきましては、その旨を承知された方のみお読みください。
メインストーリーは公式サイトにもある通り、東京駅の近くにある秘密の駅から出発する、【現実世界である「うつしよ」から、生と死の狭間にある不思議な世界「かくりよ」へと向かう列車】に乗り込み、かくりよの世界でおこるさまざまな物語を垣間見るというもの。「かくりよ」では「言葉を発してはいけない。発すると言霊が抜け、うつしよに戻れなくなる」というルールがあるため、観客も演者も原則として一切言葉を発しません(駅構内・列車内におけるアナウンスは日本語・英語音声あり)。
メインステージになる駅・列車のほか、先程まで展示会スペースだった箇所にある様々なアート作品、エキシビションタイム中は入れなかったエリアにある部屋など、様々な場所で物語が進行します。
最初は事前に決められたグループごとに演者に導かれ、各部屋を巡りながらパフォーマンスを観覧。物語に登場する人々には、現代人、冒険家、発明家などのほか、おとぎ話がモチーフになった人物や陰陽師、巫女など、『日本』を舞台にした内容となっています。観客側も入場時に配布される「狐面」を装着します(完全に被らず横や後ろでもOK)。私のグループは、人間に助けられた鶴が人の姿となるシーンからでした。
中盤、一度全員がメインステージに集合したあとは、自由行動。各所に散った気になる演者を追いながら、あるいは動かずその場で起こる様々な場面を観覧するという形になります。イマーシブシアターの醍醐味でもある「完全自由行動での観劇」が不慣れな人でも、前半で一通りの場所、演者を見ているので、スムーズに行動しやすいように考えられていると思いました。なお、会場が高架下にあるので時折本物の電車の走行音が聞こえるのですが、本作品のストーリーに鉄道が関わっているので、これも一つの演出として違和感がなく楽しめました。
私は、最初に鶴のイメージが強くあったので、そのまま鶴姫の動きをメインに追いかけていました。
最後にメインステージに全員戻り、エンディングシーンで終了。
今回の作品は、演者10名に対し、観客は最大20名程度のようですので、以前体験したイマーシブフォートの『江戸花魁奇譚』よりもさらに、濃密な体験ができます。実際、後半シーンの中でとある個室でのパフォーマンスは、観客が私1人だけなのに演者が3人という状況にもなりました。その分、利用料金は結構高めで、土日通常料金は12,000円。リピートするかというとちょっと尻込みしてしまう価格でした(言葉を使わないという点で、インバウンド向けの価格設定でもあるのでしょう)。ただし、それだけの体験価値はあったなと思いました。