TDSに先日オープンしたアトラクション「タートル・トーク」。
このアトラクションを利用した方は、まず最初に驚きますが、その後すぐに仕掛けが想像出来るため「なぁんだ」となってしまうと思います。
きっと、他のテーマパークや遊園地でも似たようなアトラクションが今後オープンしそうですね。
ただ、過去にもTDL/TDRのアトラクションを真似したアトラクションは数多く出回っていますが、そのいずれも本家を上回るものではありませんでした。なぜならディズニーのアトラクションは、アトラクションの物語や演出の為に「何気ない最新技術」をフルに導入しているにもかかわらず、それを真似たパークはそもそもの演出が下手だったり、演出が良くても技術が付いてきていないものばかりだったからです。
「タートル・トーク」にも最新技術が何気なく盛り込まれています。そしてその技術が想定された演出を100%発揮するような使われ方をしていると思います。
今回、その中で(私の予想の範囲で)重要な2点を、ちょっと書いてみたいと思います。
★その1(技術面)
技術面で最も重要なのは、「リップシンク」でしょう。演者の音声とキャラクターの口の動きが100%合っています。
不思議なことに、このリップシンクがホンのコンマ何秒か遅れただけで、人間は違和感を感じてしまうのですが、このアトラクションにはそれがありません。
処理としては「演者の表情と音声を読み取って、分析し、CGに出力する。」というだけですが、これは最速のコンピューターを使用しても、人間が違和感を感じないまでの速度で処理するのはかなり難しいでしょう。
では、どうして違和感なくシンクロできるのでしょうか?
恐らく、演者の音声の方が実際の発言より一瞬遅れてシアターに到達しているのではないかと想像します。
これにより映像処理の遅れによる違和感を最小限に抑えることが可能になります。
「いや、そんなことはない。音声が遅れていたらシアターのゲストとの会話がおかしくなるはずだ」というご意見もあるでしょう。実際、衛星中継などのように数秒単位での遅れであれば会話に違和感を感じます。ですが、コンマ数秒であればゲストはまず気がつきません。
現在の携帯電話同士での通話でも、音声をデジタル変換する時点で僅かな遅延が発生していますが、会話は違和感無く成立します。
「タートル・トーク」のCG処理技術が、ここまでの遅延で済んでいるレベルというのは驚愕すべきですが、それにプラスアルファの技を使用して、演出にも妥協しないこのアトラクションが成り立っているのです。
ちなみに、遅延処理が行われているかどうかの確認方法が1つだけあります。それは「ゲストとクラッシュで合唱できるかどうか」です。遅延が行われているならば、互いの微妙なタイミングのズレのために合唱は難しいはずです。とはいうものの、アトラクションでそれを実行するのはまず無理ですが…。
★その2(演出面)
1つの上演回で、クラッシュ役の音声を担当しているのは、もちろん1人ですが最低でももう1人とチームを組んでクラッシュを演出していると想像できます。
その「演出の進行」役がこのアトラクションで重要になっています。
ある程度、台本はあるものの、ゲストとのトークなので常にアドリブが要求される音声担当は、かなりの集中力を必要とします。
クラッシュの動きの操作ももし行っているとすれば、その負荷はかなりのものとなります。
進行役の仕事は、アドリブを要求されない進行操作、アドリブの記録などでしょう。
特にゲストの名前やゲストの回答は、すぐさま進行役によってメモされ、音声担当の見えるところに置いていると想像できます。
前半に聞いたゲストの名前などを後半でも使用するのは、この連携プレイがあってのことでしょう。もしかすると進行役はもっと大人数かもしれません。
さて、他のパークが、真似たアトラクションを作ったとします。当然規模は小さくなり、1度の入れるゲストの数も減るでしょう。
すると、それだけの人数のためだけにスタッフを何人も準備するのはコストが高すぎるので、1人が全てをこなすような対応にならざるを得ません。すると…演者の作業が増えすぎ、一番重要な「客との会話」が半端になってしまいます。
そうなってしまったら… 面白くなくなってしまいますね。
「タートル・トーク」は一見、他のパークでもすぐに似たようなモノが出来そうでいて、実は難しい。それを理解した上で、挑戦するパークはあるのでしょうか。あるのであれば、それはそれで見てみたいです。
※あくまで、ここに書いていることは全て私の想像です。でも、恐らく最低限、この想像の範囲のことはこのアトラクションで行われているでしょう(そして、私が想像することができないようなことも行われているのでしょうけれど)。